料理酒を入れる理由は? 日本酒の役割と効果的な使い方について

料理酒の効果は?

料理酒には、多くの効果があります。

たとえば、「食材に味がしみ込みやすくなる」「食材特有の不快な臭いを揮発させる」「風味がよくなる」「保存性が良くなる」「肉が柔らかくなる(うま味が増す)」などです。料理酒を使うのは、意味があってのことです。

ちなみに、日本料理における料理酒とは“日本酒(清酒)”のことを指します。(※加塩料理酒ではありません)

料理酒の効果とは?

料理酒には、主に5つの効果があります。

それが、「①味が入りやすくなる」「②不快な臭いを揮発させることができる」「③保存性が良くなる」「④風味がよくなる」「⑤肉が柔らかくなる」です。また、⑤には「うま味が強くなる」という効果もあります。

日本酒は、日本料理には欠かすことのできない調味料であるといえます。

効果理由
味が入るアルコールは分子が小さい
消臭アルコールの共沸
保存性アルコールの殺菌作用
酸性pH
風味発酵による副産物
肉の軟化保水性の向上
酸性プロテアーゼの活性化

調理の前半に加えるのがポイントになります。

たとえば、味をしみ込ませたい場合には食塩を含む調味料よりも先に(料理酒と砂糖など他の調味料を)加えることがポイントになりますし、肉を柔らかくしたい場合には料理酒をもみ込んでから調理することになります。

以下は、各効果の詳細になります。

味が入りやすくなる仕組みは?

味が入りやすくなる仕組みは?

料理酒は、味を染み込みやすくします。

料理酒(日本酒)には、約14%のアルコールが含まれています。アルコールには“分子量が小さい”という特徴がありますので、料理に加えられることにより(他の調味料よりも)素早く食材に入っていきます。

以下は、主な調味料の分子量です。

調味料分子量
料理酒
(アルコール)
46.07
食塩58.5
砂糖342

(酢酸)
60

調味料の「さしすせそ」には意味があります。

分子量の大きな砂糖は、分子量の小さな食塩よりも先に加えなければ食材にしみこんでいきません。そのため、食塩や揮発性の成分を含む調味料(酢・醤油・味噌など)は調理の終盤に加えるのがセオリーとなっています。

また、アルコールには「同時に存在する甘味やうま味などを引き連れて食材に入っていく」ような働きがありますので、食材に味が入りやすくなります。

このことからも、料理酒は食材に味をしみ込ませるためにも利用されます。

MEMO
味をしみ込ませたい料理(煮物など)には、必ず加塩料理酒以外を使います。加塩料理酒を使って食塩を先にしみこませてしまうと甘味やうま味などが入りにくくなります。

不快な臭いが和らぐ理由は?

不快な臭いが和らぐ仕組みは?

料理酒は、料理の臭みを減らします。

食材には、原料由来の“臭み“があります。たとえば、魚介類には生臭さがありますし、肉類には畜肉種ごとに特有の臭みがあります。また、植物であっても種類ごとに異なる特有の(くせのある)臭みがあります。

アルコールには、これら原料由来の臭みへの消臭効果があります。

これは、アルコールの有する“沸点が約78℃”であるという特徴が関係しています。アルコールは水よりも低い温度で揮発するため、アルコールが揮発する際には(一部の)臭い成分も同時に揮発していきます。

この仕組みは、物理的消臭方法(アルコールによる共沸)と呼ばれる反応です。

保存性が高まる仕組みは?

保存性が高まる仕組みは?

料理酒は、料理の保存性を高めます。

アルコールには、殺菌作用があります。料理に使われたアルコールは微量ながらも料理に残ることになりますので、アルコールの殺菌作用により料理の保存性を高めることに一役買ってくれることになります。

アルコールは、確実に残ります。

「どのくらい残るのか?」に関しては調理法や調理道具などによっても変化しますが、煮込み料理で(最初に加えたアルコールの)5%ほど、加熱時間の短い料理では10~50%ものアルコールが残ると考えられています。

少なからず影響力のある濃度です。

風味がよくなる理由は?

風味がよくなる仕組みは?

料理酒は、料理の風味を良くします。

日本料理における料理酒とは、日本酒のことを指します。日本酒は蒸米に米麹と水を加えて酵母菌によるアルコール発酵を促した醸造酒ですので、日本酒には複雑な甘味やうま味などが含まれていることになります。

これらの甘味やうま味などが料理をおいしくします。

そのため、料理酒は“質”で選ぶことをおすすめします。安すぎる料理酒の多くには、日本酒特有の発酵産物が含まれていません。これは、安すぎる料理酒の多くが“調味された醸造アルコール”であるためです。

そのような料理酒には、日本酒の芳醇な香味を期待することはできません。

料理酒で肉が柔らかくなる理由は?

日本酒は、肉を柔らかくします。

日本酒の水素イオン指数は、pH4.0~4.5です。肉には酸性にすることで「筋原線維タンパク質が緩んで保水性が向上する」「酸性プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が活性化する」などの性質があります。

このことからも、肉は料理酒をもみ込んでおくことで柔らかくなります。

唐揚げを作るときに料理酒をもみ込むのはこのためです。しかし、共通点の多い調味料である“みりん”の水素イオン指数はpH5.0~6.0であるために日本酒のように肉を柔らかくする効果は望めません。

日本酒とみりんは、特徴を理解して上手に使い分けることがポイントになります。

【まとめ】料理酒を入れる理由は?

料理酒には、多くの効果があります。日本料理における料理酒とは、日本酒のことを指します。日本酒には14%前後のアルコールの他、醸造時に生じる芳醇な香味成分が含まれています。これにより、「食材に味がしみ込みやすくなる」「食材特有の不快な臭いを和らげる」「保存性が高まる」「風味がよくなる」「肉が柔らかくなる(うま味が増す)」などのメリットが得られることになります。

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