味は、組み合わせや順番により呈味性が変わります。
味には、基本味と呼ばれる五味(塩味、甘味、苦味、酸味、うま味)があります。料理においてこれらの呈味物質が単一であることは少なく、多くの場合は数種類の呈味物質が相互の関係を生じさせながら存在しています。
たとえば、家庭料理に化学調味料が良くないといわれるのには、「(化学調味料による)うま味には塩味を抑制してしまう作用がある」ことが一因になっています。
味の相乗効果とは?
同種の味の混合により呈味性が強まることを味の相乗効果といいます。
たとえば、鰹だしと昆布だしを合わせて使うことが多いのは、鰹だしのイノシン酸と昆布だしのグルタミン酸ナトリウムには共存することによって飛躍的にうま味が強くなるという味の相乗効果があるためです。
味の相乗効果は、昆布だし(グルタミン酸ナトリウム)と干し椎茸(グアニル酸)によっても成立します。
味の抑制効果とは?
ある種の味が他種の味によって抑えられることを味の抑制効果といいます。
たとえば、コーヒーに砂糖を加えるとコーヒーの苦味が抑えられる。グレープフルーツに砂糖をかけると酸味がまろやかになる。化学調味料を加えると塩味が抑えられて薄味に感じられるようになる。などは、味の抑制効果によるものです。
味の抑制効果には、良い面もあれば悪い面もあるということです。
味の対比効果とは?
他種の味により元の味が強まることを味の対比効果といいます。
たとえば、おしるこに少量の食塩を加えると甘味を強く感じられるようになり、しっかりとしただし汁でみそ汁を作ると塩味が強く感じられるようになります。これらは、味の対比効果により元の味が強く感じられるためです。
こられのことからも、減塩のためには化学調味料を使わずにだしを引くことがポイントになります。
味の変調効果とは?
食べる順番により味が変化してしまうことを味の変調効果といいます。
たとえば、塩水を飲んだ後に普通の水を飲むと甘味を感じられます。するめを食べた後にみかんを食べると苦味を感じられます。これらは、味の変調効果により次に味わう成分の味が異なるものに感じられてしまうためです。
少し特殊な例を挙げれば、ミラクルフルーツを食べた後には酸味を甘味に感じられるようになりますし、ホウライアオカズラ(ギムネマ・シルベスタ)を食べた後には甘味を感じられなくなるなども味の変調効果によるものです。
味見をする際には注意が必要です。
【まとめ】味相互の関係とは?
料理の味には、複数の呈味物質が複雑にかかわりあっています。組み合わせにより特定の呈味性が強まる(または弱まる)ことがありますし、順番によっては異なる呈味性に変化してしまうこともあります。家庭料理に化学調味料が嫌われることがあるのは、化学調味料が塩味を抑制してしまうためです。化学調味料を使うと、必要以上に味つけを濃くしなければおいしいとは感じられなくなります。