手打ちパスタには、セモリナ粉を使いません。
パスタの作り方には、大きく“機械打ち”と“手打ち”があります。パスタの小麦粉には“デュラム・セモリナ粉”が知られていますが、セモリナ粉を使うのは機械打ちの(または手打ちでもパスタマシンを使う)場合に限られます。
できなくはありませんが、かなりの力が必要となるために一般的ではありません。
小麦粉の種類による違いとは?
パスタの小麦粉といえば、デュラム・セモリナ粉です。
セモリナ粉は硬質のデュラム小麦から作られたパスタ用の小麦粉です。大きくは強力粉に分類される小麦粉ではありますが、一般的な強力粉よりも粒子が大きく、カロテノイド色素を含んでいることが特徴になります。
そのため、パスタは黄色っぽい色をしています。
種類 | タンパク質(%) | 湿麩(%) (※水を含んだグルテン) |
---|---|---|
強力粉 (セモリナ粉) | 11~13 (13以上) | 35 |
中力粉 | 10 | 25~35 |
薄力粉 | 8以下 | 25以下 |
手打ちバスタの食感は、グルテンの形成量により変化します。
グルテンとは、小麦粉に含まれている2種類のタンパク質(グリアジン、グルテニン)がSH-SS交換反応によって粘りと弾力性のある網目状の物質に変化したものです。グルテンの形成量によりパスタのコシは強くなります。
小麦粉をよくこねるのは、グルテンを形成させるためです。
パスタにコシを出すには?
パスタのコシは、グルテンによるものです。
グルテンは、小麦粉に水と食塩を加えて物理的な力(練る、こねる、引っ張るなど)を加えることで形成されます。食塩を加えるのは、食塩には“タンパク質を凝集しやすくする作用”があるためです。
グルテンの形成によりパスタにコシが生まれます。
ポイント | 仕組み |
---|---|
強力粉 | タンパク質含有量が多い |
物理的な力を加える | グリアジンとグルテニンがつながる |
食塩添加 | タンパク質の凝集作用 |
パスタ生地は、練った後に休ませます。
小麦粉を練ると、SH-SS交換反応によりグルテンが形成されます。グルテンの粘弾性はよくこねるほどに強くなっていき、麺棒でのばそうとしても伸びない(縮んでしまう)ほどに強くなります。
そこで、休ませます。
30分ほど生地を休ませると、力のかかっていた部分でSH-SS交換反応が起こり新たにグルテンの形成が進みます。すると、元に戻ろうとする力(縮もうとする力)が小さくなってのばしやすくなります。
また、休ませることで水と粉が十分になじむようにもなります。
セモリナ粉を使わない理由は?
一般的に、手打ちパスタにはセモリナ粉を使いません。
セモリナ粉は、かたくしまった仕上がりになるところに魅力があります。しかし、セモリナ粉の生地をこねる(またはのばす)のにはかなりの力が必要です。そのため、一般的な手打ちパスタではセモリナ粉を避ける傾向にあります。
むしろ、薄力粉を加えて練りやすくすることもあるほどです。
もちろん、セモリナ粉を使えないわけではありませんが、強い力で時間をかけてこねていく必要がありますのでおすすめできません。デュアル・セモリナ粉は、機械打ちやパスタマシンを使える環境で使われるべき小麦粉です。
【まとめ】手打ちパスタにセモリナ粉は使わない?
手打ちパスタは、強力粉・卵・食塩があれば作れます。なんとなく「パスタ=デュラム・セモリナ粉」というイメージがあるかと思いますが、一般的な手打ちパスタのレシピにセモリナ粉が使われることはありません。むしろ、薄力粉を加えて柔らかくするケースの方が多いほどです。セモリナ粉には、機械打ちやパスタマシンをお勧めします。