ジャムが固まらないのには、ペクチンが関係しています。
ジャムのとろみは、ペクチン(植物の細胞壁や中葉を構成しているゲル化剤)によるものです。ペクチンには「果実による含有量の違い」「ゲル化の条件」などがありますので、適切な果物を選んだ上でゲル化の条件を満たしていく必要があります。
ペクチンのゲル化条件を満たせていなければ、ジャムは固まりにくくなります。
ジャムが固まる仕組みは?
ジャムは、ペクチンのゲル化により固まります。
果実に含まれるペクチンは加熱により溶出します。しかしそのままではペクチン分子の結合(ゲル化)は起こりませんので、「砂糖を加える」「煮詰める」「酸度を上げる」などによってゲル化を促す必要があります。
そこで役立つのが、ジャムの材料(果実・砂糖・レモン汁・ペクチン)です。
材料 | 働き |
---|---|
果実 | ジャムの主材料 |
砂糖 | 砂糖分子がペクチン鎖を引きつける |
レモン汁 | 負の電荷を中和して結合を促す |
ペクチン (食品添加物) | 果実のペクチン不足を補う |
このことからも、ジャムの材料は果実により異なります。
たとえば、ペクチン含有量が多く酸味の強い果実であれば、果実と砂糖だけでジャムを作れます。しかし、ペクチン含有量が少なく酸味の弱い果実の場合には、果実と砂糖のほかにレモン汁とペクチンが必要になります。
ジャムづくりに酸味の強い果実が選ばれることが多いのは、ペクチンのゲル化には酸味が欠かせないためです。
果実のペクチン含有量は?
ペクチン含有量は、果実により異なります。
ペクチンとは植物の細胞壁や中葉(細胞壁に挟まれた部分)を形成しているゲル化剤です。ペクチンは不溶性繊維(セルロースなど)とともに“プロトペクチン”と呼ばれる硬い構造(細胞壁など)を作って植物を支えています。
このペクチン含有量により、ジャムの固さに違いができます。
果実 | ペクチン含有量(重量%) |
---|---|
オレンジ | 0.7~1.5 |
リンゴ | 0.5~1.6 |
アプリコット | 0.7~1.3 |
ブドウ | 0.2~1.0 |
イチゴ | 0.3~0.8 |
トマト | 0.1~0.5 |
オレンジやリンゴはジャムになりやすい果実です。
しかし、トマトのようにペクチン含有量の少ない果実にはペクチン(食品添加物)を補う必要があります。また、砂糖の割合が少ない場合や酸度の低い(酸味の少ない)ジャムを作りたい場合もペクチンを補います。
これは、砂糖と酸味がペクチンのゲル化に欠かせないものであるためです。
ペクチンのゲル化条件は?
ペクチンのゲル化には条件があります。
果実に含まれているペクチンは、HMペクチン(高メトキシル High-Methoxyl)と呼ばれるものです。HMペクチンには、「煮溶かしたものを酸性にすると網目状のゲル構造を作る」という特徴があります。
以下は、HMペクチンのゲル化条件です。
項目 | ゲル化条件 |
---|---|
ゲル化濃度 | 0.3~1.5% |
ゲル化温度 | 60~80℃以下 |
pH | pH2.7~3.5 |
砂糖 | 55~80% |
一般的なジャムは、45~55%の砂糖を加えて作られます。
これは、ペクチンのゲル化条件が55~80%であるためです。特に、ペクチン(食品添加物)を加えない場合には砂糖の重要性が高くなります。しかし、最終的なジャムの硬さはpH(酸味)によって大きく変わります。
ジャムの硬さは、ペクチンとpHによってコントロールされます。
鍋の素材で固まらなくなる?
鍋の素材が原因になることもあります。
ジャムは琺瑯鍋やステンレス鍋で作られます。これは琺瑯やステンレスが耐食性に優れている(酸に侵されにくい)ためであり、雪平鍋などを代表するアルミ鍋を使ってしまうと(微量ではありますが)アルミの溶出が起こります。
このアルミニウムイオンがジャムを固まりにくくします。
ペクチンには、金属イオンやマグネシウムなどと結合して「水に溶けにくい塩になる」という性質があります。ジャムのプルプルとした食感はペクチンによるものですので、ペクチンが水に溶けにくい塩になってしまうことで固まりにくくなります。
ジャムづくりは、道具にも気を使う必要があります。
【まとめ】ジャムが固まらない?
ジャムが固まらないのには、2つの理由が考えられます。それが、「ペクチン足りていないこと」と「ゲル化条件を満たせてないこと」です。前者はペクチン(食品添加物)を加えることで解決でき、後者は砂糖とレモン汁の量を増やすことで解決できます。