揚げ物は、油の温度が重要です。
温度が低すぎれば揚げ色がつきません(メイラード反応が起こりません)し、高すぎれば焦げるばかりで生焼けの揚げ物になってしまいます。油の温度をコントロールできるようになると、揚げ物は格段においしくなります。
そのためにも、油の温度による特徴を理解する必要があります。
揚げ油の低温・中温・高温とは?
油の温度は、目的により使い分けられます。
たとえば、骨付き肉などのように火の通りにくい食材は低温でじっくり揚げますし、コロッケなどのように火を通す必要のない食材は高温でサッと揚げます。また、食材の下ごしらえとして油を利用(油通し)することもあります。
以下は、具体的なイメージです。
油の温度 | 用途 |
---|---|
120~140℃ (180~200℃) | 食材の下ごしらえ |
低温 160℃前後 | 火の通りにくい食材 |
中温 180℃前後 | 一般的な食材 |
高温 200℃前後 | 火を通す必要のない食材 |
しかし、設備による違いもあります。
基本的に、160℃以上であればおいしそうな焼き色を付けることができます。このことからも本格的な設備があるのであれば(油の劣化を最小限に抑えるためにも)油の温度は160℃前後に調節されることが多くなります。
しかし、一般家庭の調理道具では食材により温度が下がりますので、温度の低下を見越して調理する必要があります。
油通しの温度とは?
中華料理には、油通しというテクニックがあります。
油通しとは、食材の下ごしらえとして油にくぐらせます。油通しをすると「均一に火が入る」「うま味が抜けにくくなる」「適度に水分が抜けてうま味が凝縮される」「臭みが取れる」などのメリットが得られます。
粉をふるってから油通しをすることもあります。
ちなみに、油通しの温度はや粉の有無は目的により変化します。たとえば、肉の油通しには粉をつけて120~140℃で行われるのがセオリーですが、根菜類などの油通しには粉をつけずに180~200℃で行われます。
また、ひき肉などの臭み抜きには100℃以下の油で洗うこともあります。
低温(160℃)の特徴は?
低温とは、160℃前後のことを指します。
160℃は、「衣を落とすと完全に沈んだ後にゆっくり浮き上がってくる(もしくは菜箸の先端から細かな泡が出る)」くらいの温度です。一般的には、鶏のから揚げの「二度揚げの一度目の温度」だと考えてもらえれば分かりやすいかと思います。
ゆっくり揚げ色がついていきますので、汎用性の高い温度です。
中温(180℃)の特徴は?
中温とは、180℃前後のことを指します。
180℃は、「衣を落とすと鍋底まで沈むか沈まないかくらいのタイミングで浮き上がってくる(もしくは菜箸全体から細かな泡が出る)」くらいの温度です。鶏のから揚げであれば「二度揚げの二度目の温度」です。
油の粘度が低くなることからも、油切れが良くなります。
高温(200℃)の特徴は?
高温とは、200℃前後のことを指します。
200℃は、「衣を落とすと落ちたとたんに水分が蒸発して沈まない(もしくは菜箸全体から勢いよく泡が出る)」くらいの温度です。揚げ色が付きやすく、パン粉揚げであれば1分以内には理想的な揚げ色になります。
このことからも、火を通す必要のない食材(コロッケなど)や火を通したくない食材(新鮮な魚介類など)に用いられることの多い温度です。
油の温度を安定させるコツは?
揚げ物の難しさは、温度管理の難しさにあります。
油の温度を安定させるためには“熱エネルギーを蓄える”ことがポイントになりますので、「油の量を増やす」「熱容量の大きな揚げ物鍋を使う」「一度に揚げる量を減らす(水分を拭き取る)」などによって油の温度は安定しやすくなります。
仕組みはシンプルです。
手段 | 仕組み |
---|---|
油の量を増やす | 熱容量が大きくなる |
銅鍋や鉄鍋など | 熱容量が大きい |
水分を減らす | 気化熱が小さくなる |
揚げ物は、油の量が多いほどに“楽”です。
家庭での揚げ物の難易度が高いのは(油の量が少なすぎるために)温度のコントロールが難しいことにありますので、「油の量を増やす」「銅鍋や鉄鍋を使う」「少しずつ揚げる」ことにより上手に揚げられるようになります。
ある程度のテクニック不足は、道具で補えます。
【まとめ】揚げ物の温度は?
揚げ物の油の温度には、下ごしらえの温度(120~140℃および中温や高温)・低温(160℃前後)・中温(180℃前後)・高温(200℃前後)があります。揚げ物は油の温度により仕上がりが変わってきますので、特徴を理解した上でコントロールしていくことがポイントになります。