卵焼きはフライパンにくっついてしまうことがあります。
特にテフロン加工(フッ素樹脂加工)の卵焼き器から鉄や銅の卵焼き器に切り替えた場合にはその傾向が強くなり、「すぐにくっついてしまってうまく巻けない」「テフロン加工のほうが使いやすい」などの不満を持ってしまうことも珍しくはありません。
原因として考えられるのは、「道具の使い方」と「レシピ」の2点です。
卵焼き器の素材による違いとは?
調理道具は、素材により使い方が変わります。
たとえば、一般的な卵焼き器(卵焼きフライパン)の素材には「フッ素樹脂加工」「鉄(または鋳鉄)」「銅(錫引き)」の3種類がありますが、フッ素樹脂加工は空焼きできず、鉄や銅は空焼きしなければ使えません。
卵焼き器の素材を切り替える場合には注意が必要です。
また、ガスコンロの安全装置(Siセンサー)部分の温度が上がらないためにくっつきやすくなってしまうこともあります。
フッ素樹脂加工のフライパンは?
フッ素樹脂加工のフライパンはくっつきません。
しかし、フッ素樹脂加工(テフロン加工)は高温に弱い側面がありますので、空焼きなどをしてしまうと表面加工のダメージとなりくっつきやすいフライパンになってしまうこともあります。そうなってしまうと買い替えるしかありません。
基本的に、フッ素樹脂加工のフライパンはくっつきません。
くっついてしまうということは「フッ素樹脂加工がだめになっている」か「レシピに問題がある」かのどちらかです。まずはレシピの見直し(水分量と糖質量のバランスの変更)から始めてみることをお勧めします。
大半の場合はレシピの見直しにより解決できます。
鉄の卵焼きフライパンは?
鉄のフライパンは熱してから油をひきます。
表面加工のない鉄のフライパンには、“吸着水“と呼ばれる水分が付着しています。そのまま油を引いたのでは油なじみがよくないために食材がくっつきやすくなります。そのため、鉄フライパンは十分に熱してから油をひきます。
これは鉄フライパンの基礎ですが、鉄の卵焼き器でも同じです。
また、鉄や銅のフライパン特有の問題として“洗い残し”が食材をくっつけるきっかけになってしまうことがあります。基本的に、鉄や銅のフライパンには洗剤を使いません。しかし、洗わないわけではありませんので誤解しないようにする必要があります。
洗剤を使わない分、普段以上に念入りに洗います。
銅の卵焼きフライパンは?
銅のフライパンは、基本的には鉄と同じです。
しかし、一般的な銅の卵焼き器には“錫引き加工”が施されていますので鉄のフライパンのように熱することはできません。錫には柔らかく融点が低い(約230℃)という特徴があるため、鉄のフライパンのように熱してしまうと錫引き加工をだめにします。
このことからも、銅は鉄よりも丁寧に扱う必要があります。
ちなみに、一般的な銅の卵焼き器に錫引き加工が施されているのには2つの理由があります。それが、「機械的強度を高めて手入れを楽にすること」と「無毒性の被膜により食中毒症状を防ぐこと」です。
あまり知られていませんが、銅には「(銅イオンが食品に移行することによる)吐き気や嘔吐、下痢などの食中毒症状」が報告されています。
使い方によっては問題になることもあります。
参考 (4)銅製品又は銅合金製の食品用器具及び容器厚生労働省くっつきやすい卵焼きのレシピとは?
卵焼きは、調味料により巻きやすさが変わります。
一般的な卵焼きには「卵・だし・砂糖・醤油(または塩)など」が用いられます。卵焼きは卵の熱変性を利用した料理ですが、だしには「卵液を凝固しにくくする」「卵液をゲル化させる」などの働きがあり、砂糖には「タンパク質の熱変性を遅らせる」などの働きがあります。
そのため、だし巻き卵はプルプルになり、甘い卵焼きはふっくら焼き上がります。
材料 | 卵液への影響 |
---|---|
だし | 凝固を阻害する ゲル化を促す |
砂糖 | 熱変性温度を高くする |
このことからも、だしと砂糖の併用は卵焼きを難しくします。
卵焼きが「巻きにくい」「くっついてしまう」などの場合は、「だし巻き卵には砂糖を入れない」「甘い玉子焼きにはだしを入れない」といったレシピにするだけでも格段に巻きやすくなるはずです。
好みにもよりますが、甘いだし巻き卵にチャレンジするのは慣れてきてからでも遅くはありません。
【まとめ】銅の卵焼き器はくっつく?
卵焼き器(卵焼きフライパン)が使いにくいのには、「道具の使い方」か「レシピ」のどちらかに問題がある可能性があります。卵焼き器の素材には「フッ素樹脂加工」「鉄(または鋳鉄)」「銅(錫引き)」などがありますが、それぞれに使い方が異なりますので注意が必要です。また、レシピ(だしと砂糖の有無)による難易度の違いもありますので、卵焼きがうまく焼けないのは一概にテクニックの問題だけとは限りません。